| 筆者が大の飛行機嫌いと言う事もあって、過去に海外でレースを観戦した事は残念な事に1度も無い。しかし、以前1度マカオを訪れた事があり、その際伝統のF-3マカオ・グランプリの舞台となるギア・サーキットを歩いて来た。が、残念ながらグランプリ開催中では無かったので単純に歩いて来ただけ。そして、このギア・サーキット、実は普段は全くの"公道"であり、F-3マカオ・グランプリ開催時だけ一般車を通行止めにし、観客席やフェンスを設けてレース用のサーキットへと変貌するのである。いわゆる"公道サーキット"だ。普段は時折見かけるレース時の名残り(看板や案内等)以外に、ここをフォーミュラ・マシンが曝走する、とは到底考えられないような普通の街であり、実際に歩けば余計に実感が湧かないと言うのが正直な感想であった(リスボア・コーナーで事故が多発する理由だけは解った気がした)。そして、その"公道レース"として最も名高く、そして長い歴史を持つのがインディ500/ル・マン24時間と並んで"世界三大レース"と称される"F-1モナコ・グランプリ"だ。人口わずか2万人、国の端から端まで歩いても30分程度、国営カジノと観光収入で成り立つ税金の無いパラダイス、と言うこの小さな国で毎年行われるモナコ・グランプリは地中海を望む美しい街、モンテカルロの一般道を閉鎖し、グランプリ発祥の'50年から現在まで、殆どレイアウトも変らずに開催され続けている歴史と伝統のレースである。F-1やCART等、カテゴリーを問わず公道を使ったレースは開催されているが、F-1モナコ・グランプリ以上の公道レースは存在しない。更に、モナコ・グランプリの勝者は"モナコ・マイスター"と呼ばれ、ここでの1勝はレース3勝に値する、とまで言われている。初代モナコ・マイスターは'60年代に5勝したグラハム・ヒル。そして'80〜'90年代にかけて6勝をマークしたアイルトン・セナ、後1勝でセナに並ぶ5勝のミハエル・シューマッハー。選ばれた者だけが制覇する事の出来るスペシャル・イベント、モナコ・グランプリ。目前に迫るフェンス、他車を追い抜く事が至難の狭いコース幅、どれを取っても"天才"が勝利するにふさわしいコースだ。また一方で、フランス/ル・マンのサルテ・サーキット、ベルギーのスパ・フランコルシャン、オーストラリアのアルバート・パーク等のように、"一部公道"と言うレースも数多く存在する。現在F-1アメリカ・グランプリはインディアナポリスで開催されているが、かつてはロングビーチ、デトロイト、フェニックス等の公道を使って開催されていた事もある(ロングビーチは現在もCARTが開催されている)。通常のレース用のサーキットに対し、目の前がガードレールやフェンス、更にビル群等に囲まれた一般道をレーシング・カーが疾走するのはかなり特殊な状況である。それだけに、丁度歩道の辺りに建設される観客席からの眺めも独特であり、観戦する側にとっても特別なイベントである。しかも、モナコではグランプリ・ウイークになると国中を上げてレースに夢中になり、実際レースのウイナーに対するプレゼンテーターはモナコ公国の国王、レーニエ大公その人なのである。まさに、ひとつの国がグランプリの為にひとつになる、夢のようなレースが現実に存在しているのだ。 ここで誰もが考える事がある。「この"公道レース"を日本でも行う事は出来ないか」と言う考え方である。事実、"ヨコハマ・グランプリ"と言う構想が何度か協議されていた事があった。更に数年前、某政治家k氏が公約として「東京でモナコのような公道レースをやる」とブチ上げて選挙に立候補した事があった。そして最近、F-1グランプリを放送する某テレビ局がお台場で実際にF-1を走らせ、それに同調した某レース雑誌が独自のコース・レイアウトを提案するにまで至った。が、もちろん実際にやるとなれば道路交通法がどうとか消防法がどうとか、更にマンホールの位置や路面の凹凸まで問題になってそう簡単に行かないのが現状である。しかも現在鈴鹿や富士をはじめとして優秀なサーキットがいくつもある日本で、何故今公道サーキットが必要なのか、と言われればそれもそうである。 しかし、だ。 '87年、初のモナコ・グランプリを走った中嶋悟は言った。「あんな狭い市街地サーキットを、我先にと突っ込んで行く欧州の連中はどこかおかしい」.....狭いコース幅、迫る直角ターン、コーナーの向こうが建物で全く見えない。こんな特殊なレースを、半世紀以上も前から欧州のドライバー達は戦って来ているのだ。"知らなきゃ、負ける"。ならばやろうではないか、我が日本でも。法律上のムズカシイ事は専門家に任せて、まずは夢のようなレイアウトから考える事にしよう。お台場も悪く無い。が、やっぱり基本は"自分の暮らす街にレーシング・カーを走らせる"事。よっしゃ、来た事の無い人/遠方の人には何だが解らないかも知れないのは承知の上で、筆者なりの地元・オリジナル・公道サーキットを作ってみる事にしよう。いつの日か、ライコネンやモントーヤが走るかも知れない。そして、地元出身の日本人ドライバーが戦うかも知れないのだ。さあ行くぜ、トーキョー・シブヤ・グランプリ!。 スタート/フィニッシュ地点は代々木公園と国立代々木第一体育館の間、つまり元"ホコ天ストレート"だ。ここから原宿方面へと進むのがメイン・ストレート、中央分離帯を挟んで下北沢方面の反対車線がピット・ロードとなり、パドックには代々木第一体育館前の広場が活用出来る。フラットな路面を左へ緩やかにカーブした直後、最初のコーナー"神宮橋コーナー"が現われる。明治神宮、原宿駅を左に見ながら右へ約120度、2速で立ち上がってシフトアップしながら岸体育館を右手に、山手線の線路に沿って緩やかな下りの"フャイヤー通り・ストレート"を駆け降りる。消防署が見えたら5速から一気に1速まで落とし、JRの高架下を左へ、そしてすぐに明治通りを右へ曲がる複合の"宮下公園ガード"を抜けて"ピンク・ドラゴン"手前で右折、約500m程の"明治通り・ストレート"を東急インを横目にイン側の車線のみで進む。今度は宮益坂を左に見ながら右へ90度ターン、再びガードを潜って即座に渋谷駅前を公園通りに向け3速で抜ける"スクランブル・コーナー"。アウト・イン・アウトで西武百貨店前をガードレールギリギリで通過、即座に前方にそびえる丸井を避けるように左側へとラインを取り、公園通りを5速・280km/hで登って行く。"スクランブル・コーナー"からのライン取り/加速を失敗すると、エンジン・パワーに優るマシンにはパルコ付近で簡単に並ばれてしまう。緩やかな右カーブを経て、公園通りを登り切った所で一気に2速まで落として渋谷区役所前を左へ。右手にNHKの巨大なパラボラ・アンテナが見えた次の瞬間突然コースは下り始め、あっと言う間に右へ90度のタイトな"宇田川町・コーナー"へ。ブラインドになっているここでの激しいブレーキングからはこのコース屈指のハイ・スピード・ポイント、"NHK・ストレート"へと突入。右手にNHK放送センターを見ながらの約600mの"高速S字"から、最終コーナーとなる"深町交番・カーブ"へ向けて激しいブレーキング競争。エスケープ・ゾーンも充分なここが最後のオーバーテイク・チャンスだ。そして、まるでベルギー/スパ・フランコルシャンの"オー・ルージュ"のように高くそびえ立つ登りのホコ天ストレートへと帰って来る。ピット・ロードは最初の中央分離帯を右へと入り、メイン・ストレートは約1km、6速全開で神宮橋へと向かう。平均ラップ・タイムは1分25秒〜30秒程度か。アップ・ダウンと90度ターン、更に複合コーナーや高速S字等を盛り込んだこのトーキョー・シブヤ・グランプリ。レイアウトの想像がつく方、如何がなものだろうか。.....え?、観客席はどこに作るのかって?。山手線止める?、スクランブル交差点通行止め?.....う〜ん、そこまで考えて無かった。まあいい、まず夢を持たなきゃ何も始まらないのだから。次回、"シンジュク・グランプリ"案ではもうちょっと具体化する事にしよう。
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