■lap100-"no race, no life・lap100記念特別作品"/???-
2004.05.07


.....う〜む、遂に100周目だ。

良くもまあ、毎週毎週この長さのコラムを書いて来たモンだ、と我ながら感心したりする。思い起こせば2年前、自身のアーティスト・サイト内で完全な趣味で何の気無しに始めたno race, no life。当初はコラムも短かったし、書きたい事は山程あったのでノンビリとしたモンであった。が、lap01/lap02.....と2ケタで始めた周回が、まさか3ケタに到達する日が来るとは思わなんだ。しかも、いつしかヒット件数は軒並み増え(リンクもしてないのにね)、気が付いたら諸外国からのアクセスまで増えてるじゃあないですか!(アンタ達いったいナニ人なんだぁぁぁ!)。そして迎えた100周目。1周年記念ではシンジュク・グランプリ開催を実現させ(してないって)、お正月にはF-1スゴロクを作って来た筆者だ、当然100周目にはそれに相応しいモノを書かねばなるまい。.....と言うワケで、今回は"no race, no life/レースが無いと生きて行けナイ"連中の事を書きます。

今回の題材は....."マンガ"です(爆)。

ま、レース・マンガと言えば筆者の世代では"マッハGo!Go!Go!"/"サーキットの狼"/"グランプリの鷹"/"赤いペガサス"/"F-エフ-"/"ガッデム"(ややマニアックか?)、そして最近では"-頭文字-D"なんかを連想される方が多いだろう。ところがドッコイ(古い.....)、"赤いペガサス"あたりは最近某レース専門誌で特集が組まれたりして、ちょっとタイムリーじゃない。ならば、どうせだから"超"タイムリーじゃないモノを書こう。でもね、実際筆者が最初に出会ったレース・マンガなのよ。そして、モノ凄く面白かったのよ。でも、謎だらけなのよ.....。

.....ってなワケで、no race, no lifeらしく掘り下げましょう。記念すべきlap100の御題は、
"チキチキマシン猛レース"であります!。

今30代以上の人、特に関東圏の人は子供の頃に間違い無く見た筈である、チキチキマシン猛レース。仮に実際番組を見て無くても、今貴方がとても若くても、独特の笑い声を上げる茶色い犬、"ケンケン"の事は御存じの筈である。製作はアメリカのハンナ&バーベラ・プロダクション。今を遡る事64年前、'40年に後世に残る名作"トムとジェリー"を作り出したMGM社のジョセフ・バーベラとウイリアム・ハンナのふたりのアニメーション・クリーターが独立し、'57年に設立したのがハンナ&バーベラ・プロダクションである。その後の代表作は'60年の"原始家族フリント・ストーン"を始め"大魔王シャザーン"/"スーパースリー"/"怪獣王ターガン"/"シンドバッドの冒険"/"ドボチョン一家の幽霊旅行"等々、製作本数は実に300作を超える。思い出して来た人も多いだろう、放送時間帯は関東圏では東京ローカルの某局(某もクソもネェな、1局しかネェモンな)で月〜金曜の夕方6時半〜7時。そう、所謂"マンガ・キッド・ボックス〜マンガの国"である。ここでは主にハンナ&バーベラ作品が繰り返し放送され、'70年スタートのチキチキマシン猛レースはその中でも1.2を争う人気作品であった。.....考えてみたら、筆者は他局で純和製のアニメーションを放送していてもこのシリーズをメインに見て育ち(グラハム・カーの"世界の料理ショー"しかり)、欧州文化の"極み"とも言うべきF-1に憧れ、中学生の時はNFLとモンティ・パイソンにハマり、高校生になって洋楽にヤラれてミュージシャンになるのだから、相当なガイコク思考なガキだった事は否めない。が、ひとつ言えるのは、そのどれもが日本人のツボにヒジョーに"ハマる"作品だった、と言う事である。そしてその傾向は、ことハンナ&バーベラ作品に強く表れる。更に、このシリーズの日本語版製作担当プロデューサー、高桑慎一郎氏は、とりあえず"天才"と称するしか無い。.....だって、原題"WACKYRACES(おかしなレース)"を"チキチキマシン猛レース"と訳すんだぞ?。"ス-パースリー(原題は"The Impossibles")"のテーマ曲が「世界の為ならエンヤトットドッコイショ、ラリホーラリホーラリルレロ」だぞ?。「コイルはデブッチョ、ボヨヨヨヨン」だぞ!?(.....)。

.....で、ここでチキチキマシン猛レースを知らない人の為に設定を簡単に説明しよう。時は'68年(米CBS放送時)、舞台はアメリカの公道レースである。毎戦Aレース/Bレースが開催され、エントリーする11台中、誰が最初にゴールへ辿り着くか。一言で言えばたったそれだけの事だが、果たして如何なるレースが展開されるのか、その内容の全てはテーマ曲の歌詞が見事に表していると言えよう。

"チキチキマシン猛レース"(作詞/水野礼子、作曲/橋場清、歌/ケーシー浅沼)

チチキチキマシン チキチキマシン 猛レース

気を付けろ爆薬だ チキチキチキチキ猛レース
ぶっつけろ邪魔をしろ 炎のカーブだぶっ飛ばせ
たとえ火の中水の中 それ行けそれ抜け猛レース
何が何でも優勝だ ゴールを目指して11台

自慢のマシンは傷だらけ 頼むぜ可愛い相棒よ

走っていればこの世は天国 握るハンドル何処へ行く
チキチキマシン チキチキマシン 猛レース

.....爆薬?。火の中水の中?。相棒??.....。ソイツは障害物競争なのか、水陸両用なのか、コ・ドライバーのいるラリーのようなものなのか?.....謎だ!。だが、どうやらどんな手を使ってでも勝利を目指す、決して2位3位では満足しない貪欲さが見て取れる。「目標は完走」とか「入賞出来たから満足」なんて言ってる奴は誰もいない、ピュアなレース魂がそこにある(.....そうか?)。そして次に気になるのはその11台のマシン/ドライバー達である。あまりにも秀逸な高桑プロデューサーの日本語版ネーミングと合わせて紹介して行こう。さて、年輩の方はどれだけ覚えているかな?。

1.  ガンセキオープン (タメゴロー/トンキチ)
2.  ヒュードロクーペ (ドラチビ/モンスター/ドラゴン他)
3.  マジックスリー (ドクターH)
4.  クロイツェルスポーツ (コウモリボス)
5.  プッシーキャット (ミルクちゃん)
6.  タンクGT (軍曹/新兵)
7.  ギャングセブン (トラヒゲ一家)
8.  ポッポSL (ヨタロー/クマッ八)
9.  ハンサムV9 (キザトト君)
10.  トロッコスペシャル (ドン・カッペ/甚平)
11.  ゼロゼロマシン (ブラック魔王/ケンケン)

.....思い出して来たかな?。コレを野沢那智氏の「さてさて、1番ガンセキオープン2番ヒュードロクーペ3番マジックスリー.....」と言う名調子で紹介するのがチキチキマシン猛レースのオープニングの定番(大抵スタートの瞬間では無くて既に始まっているのだが)。ちなみにエントリーは増えた事も無ければ減った事も無く、常にこの11台。では、今度はこの11台のマシンと搭乗するドライバー達を、あくまでもnorace, no lifeらしく掘り下げながら(?)紹介して行こう。

No.1 ガンセキオープン -Boulder Mobile(丸石原動車)- /タメゴロー(Rock)・トンキチ(Gravel)
エントリー中最小ながら重量は重い、しかしながら低重心で安定性に優れたマシンである。が、動力が何なのか、果たしてエンジン車なのかどうかすら不明。時折タメゴローとトンキチのふたりのドライバーが互いの頭をこん棒で殴り合う事によって推進力を得る事があるが、後方に2本のエキゾースト・パイプ(木製)を備えており、仮にエンジン車だとすると形状から察するに彼等自身がエンジンのピストンを兼ねているとしか考えられない(.....に、2気筒?)。シャシーは岩石削り出しのモノコック一体型で、木製のモノ・サスペンションに石製の車輪を装着、空力付加物は一切存在しない。そしてこのマシンの重大なメリットは、例えレース中にマシンがクラッシュ〜全損しても、その辺に適当な岩さえあればタメゴローとトンキチがその場でニュー・シャシーを製作、即座にレースへと復帰出来る事である。ちなみに彼等の本名はRock(石)とGravel(ジャリ)、ステアリングを握るのはGravel/トンキチの方である(どっちでも良いよ)。ふたりとも全身毛むくじゃらの全裸の原始人のように見えるが、コレが果たして特殊な耐火レーシング・スーツなのか、それとも体毛なのかは不明。しかしカー・ナンバー1を付けている所から、本シリーズのディフェンディング・チャンピオンなのでは無いかと考えられる(んなアホな)。

No.2 ヒュードロクーペ 
-The Creepy Coupe(身の毛もよだつ2人乗り車)- /ドラチビ(Li'l Gruesome)・モンスター(Big Gruesome)
元々はフロント・エンジン搭載のT型フォードがベースと思われる箱型クラシック・カー。しかしドライバーふたりは本来ボンネットであるべき位置までシートを移動して搭乗しており、エンジンはその更に前方で剥き出しの状態である事から"空冷エンジン"である事が予想される。また、高速走行時はマシン前方からゴーストが現れ、"幽霊エンジン"で走る事もある(シ、シャレだったのか.....)。加えてマシン上部にはコウモリの舞う、所謂"化け物屋敷"を搭載(この時点で既にクーペじゃネェじゃん)、屋敷内には口から炎を吹くドラゴンを忍ばせており、スタート時はドラゴンの炎でエンジンを燃焼させ、路面状況が悪化すると窓から出て来て羽根を広げて飛び、障害物を避けて進む事でアドバンテージを得る事が可能。また、ドラゴンの尻尾はマシン後方へ2枚のフラップを伸ばし、フレキシブルな可動式リア・ウィングとしても利用出来る。ドラチビ/モンスターのドライバーふたりは恐らくドラキュラ伯爵とフランケンシュタインがモデルであると考えられるが(実は彼等は"アダムス・ファミリー"のモデルにもなっている)、基本的に小さい方のドラチビがモンスターに指示を出す所から、一見WRC/プジョー・チームに於ける往年のコ・ドライバー、ジャン・トッドを彷佛とさせるキャラクターである(知〜らないっと)。

No.3 マジックスリー -Convert a Car(変化自動車)- /ドクターH(Profecer・PatPending)
天才発明家、ドクターH氏が自ら開発/操縦する水・陸・空、全条件に対応するハイテク・マシン。が、基本的に何にでも変身可能である。モノコックは木製の"ボート"で、主な推進力はマシン中央に搭載された4気筒エンジンだが、上部にモーターとプロペラを搭載。圧巻なのは空力処理で、サイド・ポッド左右にマウントされた巨大なメイン・ウィングはダウン・フォースでは無く強大なライジング・フォースを生み出し、高速走行時には自動的に(と言うより不可抗力?)空中へと浮かび、飛行モードへと切り替える事が可能。リアの翼端板には空中用と水中用を装備し、フロント・タイヤは機敏な動作に対応する小型タイヤ1個の前後3輪仕様で、これは前輪のサイズから察するにグッドイヤー社がデレック・ガードナーの依頼で後のタイレルP-34で使用する10インチ小径タイヤのプロト・タイプを製作した可能性を示唆する(しないって)。が、モノサスにフェンダーが直接マウントされているあたり、剛性がやや疑わしい作りである。反対にリア・タイヤはむしろミドル・タイヤ的な位置にマウントされ、水上走行時のマシン・バランスに一役買っている。コックピット内にシフトらしきレバー(バスみたい)が見えるが、これはヒューランドFG400用等では決して無く(.....)、水・陸・空の切り替え用レバーである。

No.4 クロイツェルスポーツ -The Crimson Haybaler(真紅のハイバラー)- /コウモリボス(The Red Max)
第一次世界大戦当時の"撃墜王"ことコウモリボスが操る真紅の戦闘機型マシン。前方に2枚フラップのプロペラを装備し、後方には複数のウィングをマウント、'04年のルノーR24、或いはティレル025('97年)やマクラーレンMP4/10B('95年)あたりの空力混迷期を連想させる。が、何と言っても真紅のカラーリングにカー・ナンバー4と来れば、往年のレース・ファンが連想するのは'65年のロレンツォ・バンディーニ、或いは'67年にマイク・パークスの駆った名車、フェラーリ312である。事実、'23年にイタリアの"撃墜王"、フランチェスコ・バラッカが自身の愛機のトレード・マークである"跳ね馬"を、かのエンツォ・フェラーリにプレゼントしたのがフェラーリのエンブレムの由来である事(lap08-"forza ferrari!"/スクーデリアの真実-参照)を考えれば、このマシンがチキチキマシン猛レースに於けるフェラーリである事は疑いようが無い。むしろ「コレはフェラーリ」とでも定義しないと、この飛行機の何処が"スポーツ"なのかが見えて来ない。そしてコックピット前方にラジエーターに囲まれるようにしてエンジンのカム・カバーのようなものが見え、一瞬「お、フェラーリV12か!?」とワクワクするが実はマシン・ガンである。スタート時はコウモリボス自らがプロペラを手動で回し、コックピットに座る。

No.5 プッシーキャット -The Conpact Pussycat(小さな子猫ちゃん)- /ミルクちゃん(Penelop Pitstop)
チキチキマシン猛レースの紅一点、ミルクちゃんが操るピンクのマシン。ベースはアルピーヌ・ルノーのカブリオレと思われるが、フロント部(唇部分)とリアのオーバー・フェンダー以外にこれと言った特徴は無く、コックピットから上方へと伸びる長いパラソルは可動式空力付加物では無く単なる日焼け防止用日傘兼シャワー設備である。タイヤはサイド・ウォールまでピンク色に統一されており、こう言う事をする以上ピレリ製である事は疑いようが無い。本名のペネロペ・ピットストップ(.....。)の名の通り、「あら〜ん」とか言いながら良くトラブルでストップするが、美女なので他のドライバーが手助けをする事も多く、ラッキーな上位フィニッシュが多い。ある時自らボンネットを開けてエンジンを全て分解してしまい、嫌になって化粧直しをしている所をハンサムV9のキザトト君に助けられるが、シリーズを通してキザトト君はミルクちゃんに恋をしているシチュエーションで描かれており、'58年の女性F-1ドライバー第一号でルイジ・ムッソの恋人、マリア・テレーザ・デ・フィリッピス(lap48-"ウーマンズ・パワー"/F-1と女性ドライバーの関係-参照)を彷佛とさせる。フィリッピスから10年、もしもミルクちゃんにスーパー・ライセンスがあったなら.....と考えるのは筆者だけだろうか(アタリマエだろ)。

No.6 タンクGT -The Army Surplus Special(特別余剰戦隊)- /軍曹(SergeamentBlast)・新兵(Private Meekly)
クロイツェルスポーツが空軍ならこちらは陸軍代表、とばかりにモノホンの戦車でエントリーするタンクGT(何処がどう"GT/グランド・ツーリング"なんだ?)。フロント部に巨大なツイン・キール式(としか考えらんネェだろ)のローラー(と言うよりロード・ローラーそのもの)を4点止めでマウントし、後輪は戦車のままキャタピラ(!)、と言う足回りはバンピーな路面にもビクともせず、完璧なグリップを実現する。だが仮にもしもモナコのモンテカルロ・ヘアピンや鈴鹿のシケイン等に連れて行ったらどう曲がるのか、いや曲がれんのけ?と言う限り無い興味をそそる。見ての通り当然全長やホイール・ベース(.....ホイール?)よりも車高の方が長く、ドライバーである新兵に高所から大砲を放ちながら(危ないって)指示を出す軍曹は、さながらマクラーレン・メルセデスに於けるノルベルト・ハウグまたはロン・デニスを彷佛とさせる。マシン全体の重量バランスは安定性重視、しかしながらトップ・スピードはなかなかのもので、ローラーと戦車の合体マシンとは思えない。見た所アメリカ軍と言うよりもドイツ軍を彷佛とさせるルックスだが、これはやはりメルセデス・ベンツが一枚噛んでいるのか。来季ファン・パブロ・モントーヤが移籍するのでは、と言う噂も実しやかに囁かれている(無いって)。

No.7 ギャングセブン -The Bullet Proof Bomb(防弾マシン)- /トラヒゲ親分(AntHill Mob)・トラヒゲ一家
颯爽とトレンチ・コートに身を包んだ7人から成るシカゴのギャング組織、トラヒゲ一家(ホントは全員に名前があるのだが面倒クセーから割愛)。マシンは'23年製フォードT型リムジンと思われるが、ヒュードロクーペもフォード製である事から、当時からフォードは同一カテゴリーへの複数チーム供給を行っていたもの、と考えられる。だがこちらは年式も古い上にほぼ原形を留めており、所謂"カスタマー供給"扱いのようである(ミナルディみたいなモンか?)。が、搭乗するトラヒゲ一家のチーム・ワークたるや圧巻で、まず基本的に7人全員が運転席と助手席に乗る(しかも立ってネェか、コイツら?)。そして3本のスペア・タイヤを常備しているものの、タイヤ・トラブルやエンジン・トラブルの際にはステアリングを握る親分を除く6人でマシンを担ぎ(恐らくシャシーそのものを持ち上げている、と思われる)、12本の足でゴールを目指す。これには、'86年ドイツのアラン・プロスト、'91年メキシコのアンドレア・デ・チェザリスもビックリである。更に、通常走行時よりも彼等が担いで走っている時の方がマシンは速く、6人力に劣るエンジン(1馬力以下か?)は即交換する必要があると思われる。トラヒゲ親分のモデルはアル・カポネと思われるが、常に問題を起こすのは大抵親分自身である。

No.8 ポッポSL -The Arkansas Chugga-Bug(アーカンソーの欠陥"ポッポ")- /ヨタロー(Lazy Luke)・クマッ八(Blubber)
その名の通り、マシン後部にマウントした石炭ストーブを動力源に走る蒸気自動車、ポッポSL。だがストーブとリア・タイヤの間には何も無く、電装系はフロント部/ドライバーの足元に隠されている。時々見隠れするシャシー裏面を見ると、後輪のシャフトの中心にミッションは存在しているようだが、せいぜい2枚と言った所である(ハイとローか?)しかもドライバーのヨタローは腕組みをして両足(素足)でステアリングを操作しており、どう見てもアクセル/ブレーキ/クラッチ等のペダル類を操作している様子は無い。更にシートはシャシー(と言うかベニヤ板だろ、コレ)に直接乗せられただけで固定もされていないロッキング・チェアーひとつだけで、そこにクマのクマッ八とヨタローのふたりが仲良く一緒に座っている。操縦性は極めて不安定。しかもホントは誰かがストーブに石炭を焼べなくては燃焼が起こらない筈なのだが、ヨタローは常に目を閉じてパイプをふかしており、クマッ八はそのシチュエーションの恐怖におののいているだけ。しかし常に石炭ストーブのタコ・メーター(?)は高燃焼表示であり、高速コーナーでのコーナリング時のシートの不安定性を除けば(ダメじゃん!)かなり速い筈のマシンである。ドライバーふたり(正しくは一人と一頭)はアーカンソーの農家の出身。

No.9 ハンサムV9 -The Turbo Terrific(モノ凄いターボ)- /キザトト君(PeterPerfect)
エントリー11台中、最も"それらしい"ハンサムV9。"V9"と言うからにはエンジンは9気筒か?(どんなレイアウトだよ)と思いがちだが、上方排気システムのフェラーリF2001的(何処がだ?)な巨大なエキゾースト・パイプを左右3本ずつ後方に伸ばす6気筒エンジンを搭載。オリジナル名の"The Turbo Terrific"にあるような加給装置は使用していない。一応ミッド・シップだが前後バランスは微妙。小型のフロント・タイヤと巨大なリア・タイヤ、そして極端に長いノーズ等は一見ドラッグ・カーのようにも見えるが、葉巻型ボディやコックピット後方のロール・バーの形状、更にフロントのラジエーター処理や番組製作/放送時期等から、F-1のロータス49('67年)がモデルと考えて間違い無い。また、このマシンはガンセキオープンに次いで壊れやすく、早くから衝撃吸収構造を取り入れた斬新なマシンである。ドライバーの"キザトト君"ことピーター・パーフェクト(.....。)は、愛するミルクちゃんのピンチには自らの順位を棒に振ってでも協力する紳士(だが相手にされてナイ)。常に自信と余裕に満ち溢れる、ハンサムでアゴの長いドライバー、ピーター・パーフェクト。彼を見る度、ミハエル・シューマッハーはキザトト君の生まれ変わりだ、と信じて疑わない(いや死んでネェだろ)。

No.10 トロッコスペシャル -The Buz Wagan(ブンブンワゴン)- /ドン・カッペ(Rufus Ruffcut)・甚平(Sawtooth)
木こりのドン・カッペ自身が設計/製作する木製マシン。モノコックは文字通りトロッコ状の箱型形状(と言うより、丁度良い大きさのベニヤ板を張り合わせただけっぽいが)、エンジンはフロント部の更に小さい箱型の中に納められている(筈の)FF車である。4つの車輪は丸ノコギリ製で、如何なる路面でもグリップするが、ホイール・ナットが存在していない為、周囲はかなり危険である。またガンセキオープン同様、マシンが壊れてもサイド・ポンツーンに装着したターニング・ベイン代わり(ホントかよ)の"オノ"を使い、ドライバーのドン・カッペ自身がその辺に生えている木を使って即座にマシンを修復する事が可能である。フロント部には木製の2本のステーによって前方に伸びた丸太を支える、所謂"スポーツ・カー・ノーズ(.....。)"を採用、更に木こり出身の大柄なドライバー、と来ればこれはもうティレル007+ケン・ティレルしか有り得ない!。コ・ドライバーを務めるのはビーバーの甚平(ほ〜ら、ジャッキー・スチュワートに見えて来たでしょ?/爆)、木こりとビーバー、と言う組み合わせからは、元々甚平が住んでいた森の木をドン・カッペが切り倒してしまい、その罪滅ぼしで行動を共にしているのでは無いか、と言う悲しくも微笑ましい事情が見えて来る(考え過ぎ)。

No.00 ゼロゼロマシン -The Mean Machine(邪魔マシン)- /ブラック魔王(DickDastardly)・ケンケン(Muttley)
本レースの主人公と言っても良い、ブラック魔王とケンケンのコンビが搭乗するハイテク・レーシング・カー。リアにロケット・エンジンを搭載しており、マクラーレンMP4/19張りの細いノーズを使用、エントリー随一のトップ・スピードと性能を誇る。が、邪魔マシンの名の通り、その性能は普通に走れば間違い無くブッチ切りであるにも関わらず、何故か先頭に立つと停止して他のマシンを待ち伏せ、あの手この手で他車の走行を妨害する事に終始する。このシチュエーションは'65年の映画"グレート・レース"のジャック・レモンとピーター・フォークに通じるものがあるが、決定的な違いはブラック魔王の目論みはことごとく失敗に終わり、全エントリー中シリーズを通じて唯一未勝利、と言う点である。そしてゼロゼロマシンには数々の"邪魔装置"が搭載されているが、殆どの場合失敗/自爆に終わる。カー・ナンバー00とブラック魔王の英国紳士的なイメージ(ヒゲだけじゃん)からデイモン及びグラハムのヒル親子を彷佛とさせるが(させないよ)、連れてる犬は雑種(Mattleyは"雑種"のMattから取ったと思われる)、しかも良く主人を裏切り、痛い目に遭っているブラック魔王を笑い飛ばす。だがそれがたまらなく愛らしく、筆者愛用のマウス・パッドはケンケン・モデルである(.....)。

.....以上11台のエントリー、初めて知ったオリジナル名に衝撃を受けた方もいるかも知れないが、むしろあらためて高桑プロデューサーの日本語ネーミングのセンスの良さに驚くべきである。.....なんつっても、"ガンセキオープン"である。確かにガンセキでオープンではあるが、子供にとっては何の疑問も無い実に自然なネーミングだったのである。そして、ドライバー(Rock/Gravel)を"岩男と砂男"にせず、トンキチとタメゴローにしたのは当時の日本の芸能文化の流行を考えれば当然であり、ポッポSLの"ヨタロー"等もこれにあたる。そして、オリジナル・ネームで気が付くのはProfecer・Pat Pending(ドクターH)=PPP、Penelop Pitstop(ミルクちゃん)=PP、Peter Perfect(キザトト君)=PPのイニシャルの並びである。これはアメリカの児童向けアニメーション作品では良く使われる手法で、覚えやすさを最優先した結果である。Lazy Luke(ヨタロー)=LL、Rufus Ruffcut(ドン・カッペ)=RR、DickDastardly(ブラック魔王)=DD等もそうだ。そして、我々が"ゼロゼロマシン"として認識していたのが"邪魔マシン(The Mean Machine)"だと知った時、子供心に「普通に走れば速いのに、何故邪魔ばかりしてるんだろう?」と言う疑問を持った我々は、実はこのマシンは邪魔する事を運命(さだめ)として生まれて来たマシンだった事に驚愕する事になるのである。ちなみにチキチキマシン猛レースの放送終了後、引き続きブラック魔王とケンケンを主役に"スカイキッド ブラック魔王"(オリジナル名は"Dastardly&Muttley"/'70年)と言う、"鳩のポッピーを捕まえるイジワル飛行隊アニメ(わかるか!)"を製作、ミルクちゃんことPenelop Pitstopは"The Peril OfPenelop Pitstop"と言う作品でSylvester Sneaklyと言う悪者に追われるヒロインに出世/独立し、ミルクちゃんを助けに現れる小さなヒーローとしてトラヒゲ一家のギャングセブンも登場する(早いハナシが"白雪姫と7人の小人"である)。更に'01年にはサイバー映画"Penelop Pitstop GT"として21世紀に復活を果たす等、チキチキマシン猛レースのキャラクター達の人気は絶大である。もっとも、放送終了30年以上が経過している日本でこの認知度の高さ、と言う事実が何よりの証しである。

.....さて、この個性豊かな出場者達の集うチキチキマシン猛レース、今度はこのレースのレギュレーションについて掘り下げて行こう。前述の通りレースはAレース/Bレースの1日2レース、番組が全34話なので計17日間/34戦となり、丁度近代F-1の二倍程度が開催される。が、開催地は全てアメリカ国内。各州ごとに主催者が代わっているものと思われる。スタート方式はグリッド・スタートやローリング・スタートでは無く、全車が横一線にスタート・ラインに並び、銃声を合図に一斉にスタートする(スターターの姿は謎である)。従って、予選は行われないものと思われるが、常にブラック魔王がコースを熟知している為、レース前に練習走行が行われる可能性は存在する。レースの舞台となるのは基本的に公道、だがスタート/フィニッシュに限ってはグランド・スタンドの存在するサーキットのようで、マラソンのようにスタジアム・スタート/フィニッシュの公道ラリー、と考えて良い。が、時折出場者(主にブラック魔王)が保安官や警察の交通課に逮捕される事もある為、意外に法的には"無許可"で行われている可能性も否定出来ない。コースは山岳地帯/都市/ジャングル等色々で、意図的な障害物レースと考える事も出来る。また沿道に観客やTVカメラ、オフィシャルの姿等は見えず、主催者は各マシンに取り付けた発信機を利用したレーダーでレース進行を監視する。どうも勝者には"法外な"賞金が用意されているらしく(当時のアメリカの事だ、恐らく1勝で100万ドル程度、全勝すれば3400万ドル/凡そ38億円!)、その主催者や冠スポンサーは開催地によって異なる、と考えられる。

次に、最も謎めいた"マシン・レギュレーション"についてである。.....ま、「無い。」と言ってしまえばそれまでだが、それじゃなんなので作る事にする(.....)。まず、少なくともスタート/フィニッシュ時は車輪を擁する自動車である事。レース中、ギャングセブンがマシンを担いだり、マジックスリーがロケットに変身したりしてしまうので、スタート/フィニッシュ時のみに適用されると考えられる。また"他人のマシンに乗り換えると失格"と言うレギュレーションが存在し、一度ブラック魔王がタンクGTに乗ってトップでフィニッシュした事があったが、このレギュレーションに違反した、として失格となっている。マシン寸法は最低全長105cm以上(ガンセキオープン)、最大全長510cm以下(クロイツェルスポーツ)、最高車高320cm(ヒュードロクーペ)。但し、タンクGTは軍曹閣下の頭部分を除く数値とする。最低重量225kg以上(トロッコスペシャル/ドン・カッペ除く)、最大重量3.600kg以内(タンクGT)。スペア・カーの使用は不可だが、コース上でのドライバー自らの修復にあたっては自由である(新車作ってる人もいるケド)。搭乗人数はひとり以上7人以下(ギャングセブン)、但し直接ドライヴィングに関係の無いヒュードロクーペのコウモリの数は入れない事とする。エントリー車は"WACKY RACES"のマークである"W"のステッカーをマシンに貼らなければならない。そして、何よりチキチキマシン猛レースに必要なのは「他のマシンに似ていない、独創的なマシンである事」である。.....ま、こんなモンかしら。

.....さあ、いよいよオタクの本領発揮だ!!(.....)。最後に番組全34話/34戦の結果を、当時のF-1世界選手権にならって1位9点/2位6点/3位4点、とポイント・ランキングに置き換えて見る亊にしよう!(出たよ.....)。4位以下は着順が不明瞭な回もあるので、あえて上位3者のみに得点を与えてみる事にする。.....栄えあるチキチキマシン猛レース、チャンピオンはいったい誰の頭上に輝くのか!?。

 【全34戦 総合結果】
1位 1.  ガンセキオープン  獲得総ポイント101点 (優勝3回/2位9回/3位5回)
2位 7.  ギャングセブン  獲得総ポイント74点 (優勝4回/2位5回/3位2回)
3位 2.  ヒュードロクーペ  獲得総ポイント69点 (優勝3回/2位3回/3位6回)
4位 5.  プッシーキャット  獲得総ポイント68点 (優勝4回/2位2回/3位5回)
5位 10.  トロッコスペシャル  獲得総ポイント65点 (優勝3回/2位5回/3位2回)
6位 4.  クロイツェルスポーツ  獲得総ポイント63点 (優勝3回/2位4回/3位3回)
7位 3.  マジックスリー  獲得総ポイント59点 (優勝3回/2位2回/3位5回)
8位 8.  ポッポSL  獲得総ポイント58点 (優勝4回/2位1回/3位4回)
9位 9.  ハンサムV9  獲得総ポイント56点 (優勝4回/2位2回/3位2回)
10位 6.  タンクGT  獲得総ポイント33点 (優勝3回/2位1回/3位0回)
11位 00.  ゼロゼロマシン  獲得総ポイント 0点 (優勝0回/2位0回/3位0回)

.....や、やっぱりガンセキオープンは強かった.....。ディフェンディング・チャンピオン/カー・ナンバー1は伊達では無かったのである。彼等は優勝回数こそ4勝の4者に及ばなかったものの、2位9回/3位5回と言うズバ抜けて安定した成績で3ケタとなる101ポイントを獲得。'02年フェラーリ並の34戦/17表彰台(あるのか知んないけど)と言う入賞率50%の圧倒的な安定性と、トラブルがあっても即座に対処/修理するチーム・ワークの良さで見事2年連続のタイトルをモノにしたのである。同様にギャングセブンのランキング2位もチーム・ワークの賜物であり、チキチキマシン猛レースを勝ち抜くには決してマシン性能に頼るだけで無く、トラブルに即座に対処出来る柔軟性が必要な事を痛感せざるを得ない。3位ヒュードロクーペは前方のマシンにトラブルがあった時に確実に上位を走っており、この安定性が好成績に繋がった。僅か1ポイント差で4位に終わったミルクちゃんはキザトト君のサポートで得たラッキーな順位でこの数字であり、決して実力とは言い難いと言わざるを得ない。6位クロイツェルスポーツから9位ハンサムV9までは混戦で、中半の2連勝で一歩抜け出ていたハンサムV9が後半全く振るわず、最後は後半戦で2連勝のマジックスリーとやはり2勝を挙げたポッポSLに逆転を許した。10位タンクGTはガンセキオープンと同じ3勝を挙げながらも2位僅か1回/3位はゼロ、信頼性の低さとレース戦略に課題を残したシーズンとなった。.....そしてゼロゼロマシンはシリーズ最多リード・ラップ数を誇りながらも、終わって見れば入賞ゼロ、最終戦ではトップでゴールしながらも失格となり、悪役としては完璧な(?)リザルトを残した。

.....'60年代生まれの筆者の世代に欠かす事の出来ないもの、それは夢/コミカルさ/悪役の存在/そして競争、である。戦後の高度経済成長の波の真只中に生まれ、"戦争を知らない世代"や"新人類"等と呼ばれ、戦時中の敵国からのプレゼンテーションを純粋に受け入れる事の可能な、最初の日本人だった筈である.....なんて事はどうでも良いや。とにかく、面白いのである。チキチキマシン猛レースを知らない人は、現在コンビニエンス・ストアでもワン・コインDVDが買えるので、是非御覧下され。で、キザトト君とシューマッハーを観比べてみて下さいな(笑)。

.....去る3月15日、ケンケン役の声優、神山卓三氏(72歳)が敗血症で逝去されました。慎んで御冥福をお祈りすると共に、たくさんの楽しみをを与えて頂いた事を心より感謝致します。



 「ケンケ〜ン、何とかして!」
-'70年/ブラック魔王(何だそりゃ)-


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